アキレス腱断裂保存療法について
伝承固定術と熱可塑性副子固定法の共通性から見えてくるもの
<富山県>島田貞之(富山県柔道整復師会)
【Abstract】
アキレス腱断裂は、近年まで保存的療法困難な損傷と考えられてきた。
しかし、高橋四郎兵衛(1900~1969)は、師・磯谷祐之助から伝授された固定術(以下、伝承固定術と言う)の記録を残している。
更に近年、吉澤らは熱可塑性副子固定法により施術期間中も、荷重歩行を継続し治癒に導いている。
今回、伝承固定術と熱可塑性副子固定法の共通点から保存的療法について考察する。
【方法】
【結果・考察】
【 結果 】
伝承固定術と熱可塑性副子固定法の共通点は、①膝下範囲の固定で対処している。②断裂端の離開防止を考慮している。③断裂部を圧迫している。④経過、予後共に良好である。以上の4項目が認められた。
【 考察 】
近年、筋電図や超音波画像などで、患部の状態を正確に把握できるため、癒合に的確な固定肢位と断裂部が離開しない歩行方法が分かってきた。また、針金副子では歩行時、固定肢位である底屈位の保持が困難なため、施術期間中の歩行は不能であったが、熱可塑性副子では歩行時の充分な固定力と、固定肢位の持続的保持が可能となり、荷重歩行が可能となったと考える。
【まとめ】
アキレス腱断裂を伝承的固定術により、経験的に治療を行ってきた時代、非常に難しい技術であった。
現在、熱可塑性副子を用いた保存的治療法が試みられている。両治療法に用いる固定法は、膝下範囲を固定する共通点がみられた。
両固定とも断裂部の離開防止と、同じく断裂部の圧迫による腱線維刺激の僅か2つの技術を確実に施行し、癒合および治癒に導いていることが分かった。